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日経産業新聞1面に北陸先端科学技術大学院大学 川上准教授らの研究成果が掲載されました  報道   

日経産業新聞1面に北陸先端科学技術大学院大学 川上准教授らの研究成果が掲載されました。
(日経産業新聞より掲載許諾 利用期限2014年05月21日)


今回、新学術領域 総括班研究支援係である北陸先端科学技術大学院大学 川上准教授と新学術領域代表、大阪市立大学の宮田真人教授は、「マイコプラズマ肺炎」の原因である「Mycoplasma Pneumoniae」の科学模型を、3Dプリンタを用いて製作しました。 その成果が5月15日日経産業新聞1面に取り上げられました。

 通常科学模型の製作では、模型の概要を業者に伝え、造型師がそれに従って粘土や発泡スチロールなどの材料を用い、長い期間かけて作り上げます。造型師が製作した模型は細やかさ、着色、仕上がりは非常に高く、美術品レベルであると言えます。しかしながら、出来あがった模型は一品(いっぴん)物であり、後に同じものを複数個必要な場合は、デザイン以外の造形作業を繰り返す事になるため、時間とコストがかかります。また製作の途中で、細かい依頼者のリクエストに柔軟に応えて修正を加えて行く事はやはり時間とコストがかかります。 さらに科学模型は、想像図等、学説が変わる可能性を持った対象物が多いため、頻繁に構造の修正が必要ですが、それは模型の刷新を意味しており、上記の手法で製作する模型の方式ではコスト的にも、期間的にも追いつけない事が問題として挙げられます。
 対して今回の模型化の試みでは、模型の3Dデータを全てコンピュータのCAD(computer aided design)ソフト内で行いました。想像図のスケッチから、CADデータを造り、これを何度も宮田代表の指示に従って形状、着色等の修正を行うことで、理想の模型データを短期間に、コストをかけずに製作することができました(試作も3Dプリンタで打ち出し、実体物を見て修正点などを川上准教授と業者間で話し合いました)。出来あがった3Dデータから、マイコプラズマの模型をフルカラー3Dプリンタで出力し、内部構造を透視出来るように窓枠を光造型で製作しました。(図1)。
figure1

 

CADでデータを製作した意義についてですが、よく生物のCG像を見かけますが、それらは実際印刷には向いていない(厚みゼロの平面や、解放面など、物理的に表現不可能)形状が多いのです。しかし今回のプロジェクトの特徴は、データ作製を全て「CAD」で行い、3Dプリンタで印刷することを想定したデータ作りをしている点です。従来の模型に比べて、その繊細さ、リアリティなどはまだまだ比べ物にならないものですが、以下の様な大きな利点を持っています。

1)模型の3Dデータは、一旦製作すれば、どの3Dプリンタでもすぐに印刷が出来るものであり、同時に複数個が容易に製作出来、また後の製作依頼が有った場合でも、安価に、短期間に製作が可能です。
2)今後新たに新発見や、学説の修正が有った場合、CADデータは簡単に修正可能なので、新たに改修版模型を、安価で刷新出来ます。
3)データはCADなので、編集ソフトがあれば、データを入手出来れば任意のカラーリング、大きさで、好みの模型を作製できます。
4)3Dデータを研究者が公開すれば、インターネットを通して、3Dプリンターが有れば世界中のどこでも誰でも、安価で同じ模型を手に入れる事が出来ます。これは小さな博物館や教育機関などにとって有益です。

 実際、今回作製した模型の3Dデータを用いて、十数万円で購入できる普及型3Dプリンタで、同様の模型を製作しました(図2)。これはABS樹脂を溶かして積層する形式のプリンタであるため、着色は出来ませんが、材料費、ケース代を含めても千円程度で製作出来ます。安価であるので、使用者は模型を気軽に「手にとって」形状を実感でき、また3Dデータはマイコプラズマ内部の構造を、模型を分解して確かめる事が出来るよう工夫して製作されています。
 今後、研究者が、自分の研究対象や、研究成果の模型を3Dデータとして配布すれば、一般の方はそれをダウンロードし、自分のプリンタでその情報を共有できるわけで、両者共に利益のある活動という事になります(注:CADにする労力、費用は研究者が自己負担する必要が有ります)。これまで大型プロジェクトの研究成果をCGアニメーション等で発表していましたが、それより遥かに安価に、成果発信が出来るようになります。
 今回の発表と同時に、3Dデータ(STL形式)は公開しますので(フルカラー用の印刷データは川上までご相談下さい)、今後3Dプリンターの普及と共に、マイコプラズマの模型を多くの人が手に取り、マイコプラズマに対する世間の関心が高まり、また本領域のアピールにつながればと思います。

                                                                                     文責 北陸先端科学技術大学院大学 川上勝

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